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電材基礎ケーブル分電盤

分電盤の幹線ケーブルサイズの選び方|主幹ブレーカー容量だけでは決まらない太さの決め方(需要率・不平衡率)

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

改修工事の記録を遡ると、この分電盤は過去10年で三度、主幹ブレーカーを交換されていた。60A、75A、100A。エアコンが増え、厨房機器が増え、そのたびに「容量が足りないなら、大きいブレーカーに変えればいい」という判断が積み重なった結果だ。ブレーカーは一度も落ちていない。担当者に聞けば「問題なく動いているから、これでいい」とすぐに答えが返ってくる。

しかし、盤の裏側で引込口からその主幹ブレーカーまでをつないでいる幹線——CVケーブルの太さは、最初に60A盤を設計したときのままだった。三度の容量アップの間、一度も張り替えられていない。

まだ何も起きてはいない。だからこそ、この状態は見過ごされやすい。

結論から言えば、幹線のケーブルサイズは主幹ブレーカーの容量から逆算して決まるものではない。決まるのは、需要率・不平衡率を踏まえた実際の想定電流と、許容電流・電圧降下という二つの制約を両方満たす断面積からであり、ブレーカーの定格はむしろその結果に合わせて選ぶ側の数字だ。この順序を取り違えると、ブレーカーが一度も落ちていないという事実は、安全の証拠には少しもならない。

この記事でわかること

  • 主幹ブレーカーの容量と幹線サイズの関係(電技解釈第148条が定める原則)
  • 需要率・不平衡率を踏まえた、実際の想定電流の出し方
  • 許容電流と電圧降下、両面からの検証手順
  • 将来の増設分をどう見込むか
  • 主幹ブレーカーだけ容量アップする典型的な設計ミス

「幹線」とはどこからどこまでを指すか

分電盤まわりの検討事項は、実は一枚岩ではない。盤そのものの種類と選び方は配電盤・分電盤・制御盤の違いと選び方で、盤の中で電流を配る導体についてはバスバー(母線)の選定基準で、それぞれ扱っている。

本記事が扱うのはそのどちらでもない。引込口(あるいは上位の配電盤)から、分電盤の主幹ブレーカーに接続されるまでの区間——実務でいう「幹線」のケーブルサイズを、どう決めるかという一点に絞る。分電盤より下流、主幹ブレーカーから各分岐ブレーカーを経てコンセント・照明に至る区間は分岐回路と呼ばれ、使う電線の種類も考え方も別物になる(この区間はCVケーブル完全ガイドで扱った幹線 vs 分岐の判断とも重なる)。

冒頭の盤で交換され続けていたのは、電気の入口にある「弁」のようなものであって、そこに電気を運んでいる「管」そのものではなかった。この二つを同じ太さの話だと思い込んでしまうところに、最初のつまずきがある。

主幹ブレーカーの容量は、幹線サイズを決める入力ではない

現場の直感では、「ブレーカーが大きい=それだけ余裕を持たせている=安全」という順序で考えがちだ。ところが電気設備の技術基準の解釈第148条が定めている原則は、むしろ逆を向いている。低圧幹線に使う過電流遮断器(主幹ブレーカーもここに含まれる)の定格電流は、原則としてその幹線の許容電流以下でなければならない。

つまり本来は、先に電線の太さと、それが安全に流せる電流の上限が決まり、その範囲に収まるようにブレーカーの定格を選ぶという順序を取る。冒頭の盤のように、ブレーカーだけを75A、100Aへと引き上げながら電線を据え置くのは、この原則を後ろから崩している状態に近い。ブレーカーが動作する電流のしきい値が、電線の許容電流を上回ってしまえば、電線の温度がすでに限界に達していても、ブレーカーはまだ動かない。電線側が先に音を上げているかどうかを、盤の外から見分ける手立てはない。

需要率——「全部同時には動かない」という前提を数字にする

とはいえ、盤につながるすべての機器の定格電流を単純に足し合わせて幹線サイズを決めると、多くの場合は過大な設計になる。空調、厨房機器、照明、コンセント——これらが建物のある瞬間にすべて定格いっぱいで同時に稼働することは、通常は起こらない。

電技解釈第148条は、この「同時には動かない」という実態を、需要率という係数で設計に反映することを認めている。需要率が明らかな場合には、機器の定格電流の合計にそのままではなく、需要率を乗じた値を使って必要な許容電流を算定してよい。需要率80%なら、合計電流に0.8を掛けた値を基準にする、という具合だ。

ただしこの係数は、「たぶんこのくらいだろう」という感覚で決めていい数字ではない。過去の実績データや、用途ごとに整理された設計基準があって初めて根拠を持つ係数であり、根拠のないまま楽観的な需要率を当てはめれば、それは幹線を細くする理由づけにしかならない。増設を重ねてきた盤ほど、「昔決めた需要率の前提が、今の負荷構成にまだ当てはまるか」を一度疑ってみる価値がある。

不平衡率——単相3線式で見落とされる中性線の偏り

単相3線式(一般的な住宅・小規模施設の引込方式)は、中性線を挟んで100Vの回路が二系統に分かれる構造を取る。この二系統に、どれだけ負荷を均等に振り分けられているかを示す指標が設備不平衡率だ。

内線規程1305節では、単相3線式の設備不平衡率は40%以下に抑えることが原則とされている(三相3線式の場合は30%以下。契約電力が小さい設備など一部に例外はある)。この数字が意味するのは、片側の系統にコンセントや照明を寄せすぎると、中性線に想定以上の電流が流れ、幹線全体の許容電流の検証がその前提から崩れるということだ。

増設のたびに「空いている系統へ」ではなく「配線しやすい系統へ」機器をつないでいくと、この偏りは静かに積み上がっていく。竣工時には均等だった負荷が、10年後には片側に寄っていた、という状態は珍しくない。

許容電流と電圧降下——両方を満たして初めて断面積が決まる

需要率と不平衡率を踏まえて実際の想定電流を算定できたら、次はその電流に対応する断面積を、許容電流表と電圧降下の両面から検証する。

許容電流は、電線が発熱によって絶縁体を損なわずに流し続けられる電流の上限を示す。一方、電圧降下は配線が長くなるほど無視できなくなる別の制約で、内線規程1310-1では幹線・分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下(構内変圧器から供給する幹線では3%以下)を原則とし、こう長が60mを超える場合に限って段階的な緩和値(電気事業者からの低圧受電なら120m以下4%・200m以下5%・200m超6%)が認められている。

許容電流表だけを見て「この太さで足りる」と判断すると、距離の長い幹線では電圧降下の基準を超えていることがある。逆に電圧降下だけを見て太さを決めると、短距離では過剰な断面積になりコストが膨らむ。どちらか一方ではなく、両方の基準を満たす断面積のうち最小のものを選ぶのが実務の手順だ。手計算が面倒な場合は、当サイトの電線の電圧降下・サイズ簡易計算シミュレーターで電源方式・電線サイズ・配線長・電流を入力すれば、電圧降下と降下率を自動計算できる。

将来の増設分をどう見込むか

現状の需要率・不平衡率を踏まえた必要最小限の断面積で幹線を張ると、その盤は「今日の負荷」にはちょうど合っていても、「数年後の負荷」には対応できないことが多い。空調の更新、EV充電設備の設置、厨房機器の入れ替え——建物が使われ続ける限り、負荷は増える方向に動きやすい。

そのため実務では、算定した必要断面積に対して、想定される増設要因を踏まえた余裕を1ランク程度見込んで選定する考え方が広く行われている。この余裕は法令上の義務ではなく、幹線を張り替える工事の手間とコストを踏まえた実務判断だ。際限なく太くすればいいわけではなく、建物の使用計画と工事コストを見比べながら、現実的な範囲に着地させる。

よくある設計ミス——ブレーカーだけ大きくして、幹線を据え置く

ここまでの流れを踏まえると、冒頭の盤で何が起きていたかが見えてくる。エアコンの増設のたびに主幹ブレーカーの定格を引き上げた判断そのものは、目の前の「ブレーカーが落ちる」という症状には対応できていた。しかしその対応が変えていたのは電気を流す量の上限であって、それを実際に流し続ける電線の太さではなかった。

需要率も不平衡率も検証されないまま、ブレーカーの定格という一つの数字だけを見て容量アップを重ねると、電線の許容電流と実際に流れる電流の差はじりじりと縮まっていく。ブレーカーが一度も落ちていないという事実は、電線が余裕を持って電流を流せている証拠にはならない。落ちていないのは、単にブレーカーの動作点そのものが引き上げられているからかもしれない。

増設・改修の際に確認すべきは、追加する機器の容量だけではない。①現在の幹線の太さと許容電流、②需要率・不平衡率を踏まえた実際の想定電流、③電圧降下の基準内に収まっているか、④主幹ブレーカーの定格が幹線の許容電流に対して原則の範囲に収まっているか——この4点をセットで確認して初めて、容量アップの判断が成立する。

よくある質問

主幹ブレーカーの容量を上げれば、電気の安全性は上がりますか?

必ずしも上がりません。むしろ幹線のケーブルサイズを変えずにブレーカーだけを大きくすると、電線の許容電流を超える電流が流れてもブレーカーが動作しない領域が広がるリスクがあります。電気設備の技術基準の解釈第148条は、低圧幹線用の過電流遮断器の定格電流は、原則としてその幹線の許容電流以下であることを求めています。ブレーカーの容量は電線の太さに従属する変数であり、先にブレーカーの定格だけを引き上げて電線を細いまま据え置くのは、この原則と逆行する考え方です。

需要率とは何ですか?どう使いますか?

需要率は、接続されている負荷の定格電流の合計に対して、実際にどれだけの割合が同時に使われるかを示す係数です。すべての分岐回路が同時に最大負荷になるわけではないという前提のもと、電技解釈第148条では需要率が明らかな場合、負荷の定格電流合計に需要率を乗じた値を使って幹線の許容電流を算定してよいとされています。ただし需要率は実績データや設計基準から根拠を持って設定するものであり、根拠のない楽観的な値を当てはめるのは危険です。

不平衡率とは何ですか?なぜ幹線サイズに関係しますか?

不平衡率(設備不平衡率)は、単相3線式で中性線を挟んだ2系統の負荷にどれだけ偏りがあるかを示す指標です。内線規程1305節では、単相3線式の設備不平衡率は40%以下に抑えることが原則とされています(三相3線式は30%以下)。偏りが大きいと中性線側に想定以上の電流が流れる場合があり、中性線の太さや幹線全体の許容電流の検証に影響します。

幹線サイズを選ぶとき、許容電流と電圧降下のどちらを優先すべきですか?

どちらか一方ではなく両方を満たす必要があります。許容電流は電線が安全に流せる電流の上限を決め、電圧降下は配線が長くなったときに末端の電圧が基準(内線規程1310-1では幹線・分岐それぞれ標準電圧の2%以下、構内変圧器から供給する幹線は3%以下が原則)を超えないかを確認するものです。距離が長い幹線では、許容電流上は問題なくても電圧降下の基準で断面積を1ランク上げる必要が出てくることがあるため、両面から検証してから最終サイズを決定します。

将来の増設分はどう見込めばいいですか?

現状の需要率適用後の必要電流だけでサイズを決めると、数年後の設備更新・増設のたびに幹線を張り替える羽目になりがちです。実務では、EV充電設備や空調更新など想定される増設要因を洗い出した上で、現状必要な断面積に対して1ランク程度の余裕を持たせて選定する考え方が広く行われています。ただし際限なく太くするのはコスト・施工性の面で非効率なので、建物の使用計画と照らして現実的な範囲に着地させることが重要です。

幹線ケーブルの調達について

「主幹ブレーカーを容量アップするので、これに合う幹線ケーブルのサイズを確認してほしい」「増設予定を踏まえて、余裕を持たせた幹線サイズを相談したい」——電気工事店・設備管理担当者様からよくいただくご相談です。

幹線サイズは、需要率・不平衡率・電圧降下という複数の変数が絡み合って決まるため、既設設備の実測データや増設計画を踏まえた個別の検証が欠かせません。当サービス「電材サーチ」では、CV・CVTケーブルの品種選定から、主幹ブレーカーとの適合確認まで、まとめてご相談いただけます。

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参考文献・出典

この内容は、第二種電気工事士ではこう問われる

主幹ブレーカーの定格電流と電線の許容電流の関係は、学科試験では『35%・55%』というルールの形で問われます。本記事で扱う『ブレーカーは電線に従属する』という原則の理解が、その設問を解く土台になります。

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